エネルギー価格高騰の影響で、撤退・倒産企業が1年で4割増加
2021年4月7日時点で登録のあった「新電力会社」(登録小売電気事業者)706社のうち、2024年3月22日時点で「撤退」「倒産・廃業」が判明したのは累計119社(構成比16.9%)。1年前(2023年3月時点)の83社(同11.8%)から36社(43.4%)増加し、2年前(2022年3月時点17社)の7倍に急増した。
内訳をみると「撤退」(これから予定している企業含む)が累計87社(構成比12.3%、前年同月比52.6%増)、「倒産・廃業」は累計32社(同4.5%、同23.1%増)。「撤退」では、前回調査(2023年6月)から23社増加した。エネルギー価格が不安定で安定供給が困難と判断した企業や、親会社の方針などで決定した事業再編の過程で合併や事業移管が発生したため、登録小売電気事業者の登録を廃止・撤退することとなった企業が増えた。
「倒産」は、地元電力(株)(福岡県、2023年12月破産、負債5億9000万円)、(株)スマートテック(茨城県、2024年2月民事再生、負債45億7100万円)とグループ会社の水戸電力(株)(茨城県、2024年2月民事再生、負債4億8000万円)の3社が今回調査で判明した。3社とも、電力販売事業に際しての電力の調達は卸市場や他企業など外部からの仕入れが中心で、市場での調達価格と需要家への販売価格が逆ザヤとなり収益を圧迫した。 「新規契約停止」は累計69社(構成比9.8%、前年同月比38.4%減)となり、市場価格の落ち着きなどから「契約受付再開」は累計47社(同6.7%、2023年6月比51.6%増)へと増えた。前回調査で「新規契約停止」となった87社のうち、今回は16社(同18.4%)がサービスを再開(一部再開を含む)した。
約4割の新電力会社が料金変動について公表
「撤退」や「倒産・廃業」119社を除いた、事業を継続している587社の動向をみると、244社(構成比41.6%)が各社ホームページなどで料金の変動について公表している。公表の形式は、料金改定や約款改定のほか、変動要因となる燃料費調整金などの調整金の導入という形だ。2023年秋以降、需要期を過ぎ電力市場も落ち着いたことから値下げに動く新電力会社もわずかにみられるものの、公表企業の9割の料金が実質値上がりするとみられる。そうしたなかでも魅力を発信しようと春に向けた新生活や引っ越しなどを足がかりにキャンペーン施策を打ち出し、顧客獲得を図っている。 しかし、変動要因は4月以降も発生しそうだ。政府は安定的な電力の供給力を確保するため、「容量市場」という新しい市場を導入した。同市場は、将来の電力の供給力を取引するもので、4年後に使われる見込みの需要を試算し、その需要を満たすために必要な容量を決定する。新電力会社は未来の電力調達のために、4月から市場管理者である電力広域的運営推進機関(OCCTO)に「容量拠出金」を支払う必要がある。そのため、料金が実質値上げになることも一部新電力会社で公表が始まっている。 さらに、3月19日には再生可能エネルギー普及を目的として電気料金に上乗せされている「再エネ賦課金」の引き上げを背景として、大手電力会社10社で5月から値上がりする見通しであることが21日に報じられた。新電力会社は大手電力より割安な料金設定で顧客の囲い込みをしてきたが、課される各種支払いによっては値上げも考えられる状況にあり、安定した顧客獲得や収益向上に課題を残し、今後の経営への影響が懸念される。
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